宝島
石の上にも三年
創作劇は一応の評価を得たが、動員には結びつかず、世界の名作や日本の有名童話の組み合わせで勝負に出ました。
NHKの「ひょっこりひょうたん島」で脚本のサブを担当されていた井上ひさし氏に角笛3年目の作品としてスチィーブンソンの「宝島」をお願いしました。
ミュージカル風の作品は井上氏の真骨頂。
楽しい歌とテンポの良い進展で話は進みます。井上氏特有の長ゼリフで上演時間が長過ぎる点がネックでしたが、子ども達の反応を見て徐々に全体を短くして行きました。
評判は悪くなかったのですが、角笛の対象年齢が幼児にシフトしていった時代でもあり創成期の作品でもあるので、新作を作り続けている間に再演をされずに埋もれていった作品の一つです。
宝島
伝説の海賊、フリントの隠した宝のありかを描いた地図をジム少年が手にします。少年はリブシー先生の協力を得て宝島を探しに向います。ジョン・シルバーという片足の男に船のヒスパニオラ号を任せますが、実はこの男の人は海賊の親分でした…。
最近ではあまり読まれなくなったロバート・ルイス・スティーブンソンの名作『宝島』、最近では「トレジャープラネット」の題名でディズニーのアニメにもなっている。
原作 スチーブンソン 脚本 井上 ひさし 演出 久保 清志 音楽 渡辺 岳夫 声の出演 松島 トモ子・他
影絵 まゆずみ しずお
花の木村と盗人たち
角笛、幻の作品
国民的映画「男はつらいよ」で有名な渥美 清さんに親方の声をお願いした角笛、幻の作品です。唯一、渥美 清さんが児童演劇に出演した作品ではないでしょうか。
新美南吉の名作「ごんぎつね」を上演し次に手がけたのが「花の木村と盗人たち」でした。演出は当時テレビ局で人形劇のディレクターをしていた忠隈 昌でした。現役の若手演出家は中田 明のペンネームで、その後、数々の角笛作品を手がけ受賞作品を生み出します。
音盤の制作に当たっては今では当たり前の別取りを東京と京都で行ったと言うことです。(当時は録音時に全員が集まって台本の流れに沿って進めるのが通常で、現在は俳優お一人お一人のスケジュールにあわせて別録りしてダビングするのが一般的となっています)
渥美 清さんは京都でTBSテレビ「泣いてたまるか」の撮影中で、熊倉 一雄さん、坂本新兵さん、はせ三児さんに東京で声を入れていただいた録音テープを京都に持参し音盤を作ったとの事です。その時、ナレーションのキャストが抜けており、隣のスタジオで天気予報を放送していた新人女性アナウンサーに急遽お願いしたと言う逸話が残っております。
花の木村と盗人たち
むかしむかし、あるところに、花の木村と言う村がありました。
そこに盗人の集まりがやってきました。
『かしら』と呼ばれる盗人の親分は子分達に村の様子を探らせている間に一休みです。しかし、子分達は今日、手下になったばかり、ドロボウなど悪いことをしたことがないので、とんちんかんな偵察をしてきて『かしら』に怒られるしまつ。
かしらはもう一度、村の様子を見に行くように命じ、また木陰で休みます。
そこに、子牛を連れ、笠をかぶった男の子が来て「遊びの仲間に入りたいから牛を預かっていてほしい」と頼んで行ってしまいます。かしらは休んでいる間に牛を手に入れたと喜び手下に自慢しようとするのですが・・・
新美 南吉のこの作品は人を信じることで犯罪を減らすと言った内容のことが語られていますが、現代の殺伐とした世の中を見通し、警鐘を鳴らしているように感じます。
原作 新美 南吉 脚本 久保 清志・白石 晴二 音楽 渡辺 岳夫 演出 中田 明 声の出演 渥美 清、熊倉 一雄、坂本 新兵、はせ 三児、他
影絵 まゆずみ しずお